Salvador Dalí (1904~1989年)
ダリについて話すということは、狂気や扇動、奇抜さや天才的な才能、高い知能と創造性について話すことと同義だと言えるでしょう。人として偉大な才能を持ち、スペインにおいて複雑な時代であった20世紀半ばに、社会的タブーとされていたことの多くを破ったのがダリという人物です。
偉大な哲学者たちに出逢ってきたダリは、ジークムント・フロイトとともに心理分析というものを発見し、パリやロンドンから追放されるまでの間、シュルレアリスム運動に参加していました。当時、自分自身のことを、インスピレーションを求めて夢の世界を探求する「唯一のシュルレアリスト」と言明していたほどです。さらに、ダリは科学、特に技術と物理に強い関心を抱いていましたが、これは、分解した人や物体を空中に浮かぶ分子で表現した作品『アトミクス』にも見てとることができます。
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«Galatea de las esferas» Salvador Dalí 1952, España 油絵 (65 x 54cm) Teatro-Museo Dalí, Figueres (España) |
ダリの作品と故郷
パリやアメリカで長年暮らし、絵画や映画作品とのコラボレーション(ディズニー、ヒッチコック、マルクス兄弟など)で大いに活躍したにも関わらず、生まれの地であるカタルーニャ北部のエンポルダ地方には常に思いを馳せていました。実際に、ポルト・リガトの地中海湾岸やカダケスの景色は、ダリの作品の多くに登場しています。
偉大な芸術的遺産を残したダリの作品のほとんどはカタルーニャにあり、フィゲラスではダリ劇場美術館と宝石美術館が代表的です。また、小さなプボルの町には、妻のガラに贈った「シュルレアリスト城」(田舎の家に要塞を作った建物)があり、ポルト・リガトの漁師が集まる海岸にも、1930年から、彼のシュルレアリスム的な家が建っています。これら3つの場所はそれぞれが大きくことなり、どれも訪れるに値するといえるでしょう。ダリをテーマに巡るルートを網羅するには2日で十分ですが、この地域にはダリの美術館のほかにも、美しい自然や質の良い料理を提供するレストランといった楽しみもあるため、満喫するには2~3回訪れることをおすすめします。
日本におけるダリ
2016年、日本の新聞社である読売新聞が京都と東京でサルバドール・ダリをテーマにした回顧展を企画し、フィゲラスにある美術館や、マドリードのソフィア王妃芸術センター、セント・ピーターズバーグ(アメリカ・フロリダ州)のダリ美術館の所蔵作品が展示されました。
豆知識
ダリは68歳になった1972年、絵画『Quan cau, cau』を描きました。この作品は、フィゲラスにある美術館の最後の展示室に飾られています。絵には、白い時計や開いた引き出し(ダリの象徴的要素)など、フランドル派の絵画(オランダ・フランドル地域)に典型的な物体が描かれており、その周りには8、9、1、2、3といった数字が浮いています。なんと驚くことに、ダリは1989年1月23日に亡くなりました。
亡くなる16年前から、すでに自分の命日をわかっていたのでしょうか?
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